この日の夕方、私はAさんと2人でじっくり話す機会を得ました。
今回の公演では勇気を持って自分の生い立ちに付いても触れて話をしたそうです。
公演を聞いた私にもその席で更に詳しい話をしてくれました。
小学校、中学校と母親の考えで養護学校ではなく普通校へ通ったこと。
通学や教室の移動には母親がAさんをおんぶしたこと。
中学の3年になってからは受験競争の中Aさんがイジメの対象になったこと。
そして精神的ショックで手まで動かなくなった時の話。
さらに音大への進学をあきらめて労働省の職業訓練校へ入校したこと。
しかし話を聞きながら、質問するためにしきりに言葉を選んでいる自分がそこにいました。Aさんがありのままを話してくれる中、質問をしようにも適切な言葉を見つけられないでいるのです。
私がAさんの自身の障害を1つの個性としてとらえ、真正面から話し合う事が出来たのはこれから8カ月先の事です。