盲導犬コニーと会う

暖かくなって桜も終わった4月19日に千葉県N市に1頭しか居ない盲導犬コニーとNさんに会う事になりました。いつもの様にAさんの家に迎えに行って待ち合わせ場所であるファミリーレストランココスへと向かいました。ココスはNさんの家の近くであることと、盲導犬の入店可能ということでよく利用されているそうです。

レストランのすぐ近くの横断歩道を車が通り過ぎる時、信号待ちをしているNさんを見つけました。少し先で車を止めて声をかけようか迷っていると、青信号でコニーとNさんが横断歩道を渡りだしました。光も感じることがないNさんですが、杖を持たずコニーと共に何事もないように信号を渡っていきます。遠くから見ていると犬の散歩をしているのと何ら変わらない姿です。結局声をかけないまま私達も車を駐車場へと入れました。

すぐに中村さんも到着。私が声をかけると「Aさんはまだですか?」とのこと。「私と一緒に到着して後ろにいます」と返事がしたのが全盲の人との一番最初の会話でした。Nさんはコニーに対して「ブリッジ」と声をかけて入り口の階段を昇ってきました。私もテレビドラマのおかげで”ブリッジ”が階段を意味する物であることは判りました。

4人で開店間もない店内へ。席へ案内してくれるウエイトレスのお姉さんの後ろをコニー、Nさん、Aさん、私が付いていきます。ここでチョットハプニングが!机の前でメニューを置いてくれているお姉さんが前かがみになったとき、短めのスカートの中にコニーが鼻づらをちょいと突っ込んだものだから「キャ!」と声は出さなかったものの慌てるや、一同「あーー、エッチなコニー」と笑ってしまいました。

しかしその後のコニーは机の下でずっとおとなしくしていました。でもきちんと座っているのではなくてすっかりリラックスして足も投げ出して寝ています。机の上でお茶を飲もうが、食事をしようがまったくお構いなし。時々太い尻尾をバタバタと振ったり、寝相を変えたりするものの、人間様の足が動こうが、けっ飛ばされようが、尻尾を触られようがまったくお構いなし。

でもコニーは机の上で話題が自分の事に及んだときだけは判ると見えて尻尾を大きくバタバタと振ったり、頭だけを机の下から出してこちらを見たり、しきりに自分の存在をアピールしてきます。2時間あまりの間にコニーの尻尾のおかげで私の靴の片方だけすっかり綺麗になりました。

コニーはオーストラリア生まれのラブラドールレトリバーで6歳の雌。盲導犬のほとんどは性格が優しくて繊細なメスなのだそうです。中村さんが「女性は優しくて繊細なのよねー」というと、コニーを含めて全員が何故か私を見て笑う。おいおい何もコニーまでこっちを見なくてもいいのに....。

1998年現在、全国で盲導犬は約800頭がおり、千葉県では約20頭が仕事に就いているそうです。千葉県N市にはコニー1頭だけだそうですが、盲導犬を持ちたいと考えている人は沢山居るそうです。しかし10頭訓練しても2頭程度しか盲導犬としては使えなく、費用も補助があるとは言えども、総額で300万円程度がかかり、全ての人へ行き渡らないのが現状だそうです。

また盲導犬と人間の共同訓練に4週間以上の合宿が必要であり、経済的事情で断念したり、住宅事情で家の中で盲導犬と共同生活をする事が出来ないために断念している人も大勢居るそうです。

しかしNさんの率直な意見として、盲導犬を持つと白い杖だけに頼っていたときと比べ行動範囲が広くなったそうです。盲導犬として仕事が出来るのは12年が限界だそうですが、コニーがリタイヤしたとしても是非次の盲導犬と生活したいそうです。

盲導犬コニーと生活するようになってから生活範囲が広がったNさんですが、やはり困った事には度々遭遇するそうです。

メディアのおかげで盲導犬への認知度が高まってきて、ハーネスを付けて仕事中の盲導犬に不用意に声をかけてはいけないことは多くの人が知ることになりました。ところが「声をかけてはいけない」という事だけが強調され、視覚障害者が困っているときにも誰も声をかけてくれないことが良くあるそうです。

盲導犬が自ら先導して道を歩むことは無いそうです。いかなる時でも主導者は視覚障害者で、外出するときには全ての道順を地図を見てから頭に入れるそうです。視覚障害者が地図を見ると聞いて一同びっくりしたのですが、特殊なインクを使って指で触ることにより道順が判るものがあるそうです。

盲導犬は指示通りに進み、障害物を避けたり、横断歩道や階段などを教えのが仕事であり、道順まで教えてくれないのだそうです。ですから盲導犬をつれていて、道に迷っている視覚障害者を見かけたときには声をかけて欲しいそうです。

「仕事中の盲導犬はご主人の許可が有っても声を掛けたり、触ってはい けない」この問題をAさんを車に乗せてからもずっと論じていました。Nさんからの答えは許可が得られれば是非交流を深めて欲しいとう事で、私の勝ち!。

ただし、道を歩いている視覚障害者に訳もなく突然声を掛けるのは駄目!。歩数を数えながら歩いていたり、頭の中で地図を描いて居ることもあるわけで、そもそも知らない人に突然声を掛けるなんて失礼なことをするのは勧誘か押し売り業の人ぐらいで、そこは常識の範囲ということです。

そして次に遭遇するのが飲食店でのトラブル。

今日のココスのように入り口に「盲導犬入店可能」とステッカーが書いてあるところは良いのですが、多くのお店で入店を断られることがあるそうで、。大きなデパートなどでも、場合によっては断られ、嫌な思いをしたことがあるそうです。

隣の町に有る柏高島屋では全店盲導犬入店可能になっているにも関わらず、ある日買い物を終えて喫茶店へ入ろうとしたところ、店員が頑として入れてくれなかったそうです。どんなに”コニーが盲導犬として訓練を受けており、このデパートは盲導犬の入店は許可しているから確かめて来てください”と言ってもまるで取りあってくれなかったそうです。

中村さんは諦めて帰りかけたところ、マネージャらしき人が慌てて駆け寄ってきて、店員の不手際を詫びやっと入れたそうです。ところが、お店が混んで並んで待っている人が居るにも関わらず、中村さんの一画だけは他のお客さんを座らせなかったそうです。「いごごちが悪くて2度と行かなくなった」という気持ちは良くわかります。

確かに体重24キロの大きなコニーに突然出会えば犬好きな人でも一瞬びっくりする事でしょう。Aさんは自宅にメリーちゃんがいるし、私14年も犬を飼っていましたから大きなコニーちゃんが足下にいても平気ですが、レストランにやってきて机の下のコニーの太い尻尾を見つけた子供達は一様に驚いていました。

さて2時間あまりのお話も終わり、外でコニーを囲んで記念撮影。

盲導犬コニーと記念撮影

私もコニーから熱烈なキスを頂戴してお別れ。ところが久々のリラックスタイムの後のせいなのか、犬好きの人間にさんざん話しかけられた後のためか、コニーがチョット興奮気味。駐車場の中でコニーは迷走を始めてしまい、ついには駐車中の車の前で中村さんは立ち往生。しばらく様子を見ていましたが、コニーも落ち着きを取り戻して来たところでNさんに声を掛けてコニーに出口を教えて無事に家の方向へ歩き出しました。

やはりいくら犬が好きでも仕事中の盲導犬に声を掛けたり触ったりしてはいけないと言うのを身をもって体験させてもらいました。

 
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