車椅子の扱い方について特訓を受ける


お盆休みのある日、Aさんから「専門学校でお世話になった先生と会うのでご一緒に如何ですか?」と連絡を貰いました。暇を持て余しているし、11時の約束をして私は庭の伸び放題になっている雑草を抜きながら時間を潰します。そうそう、天気も良さそうだし、車も久しぶりに洗うかと欲をだして作業をはじめたらいつの間にか汗びっしょり。気が付いたら約束の時間を過ぎていたので着替えて慌てて迎えに行きました。

何故が待ち合わせ場所が車で40分ほど走った大型のディスカウントショッピングセンターの駐車場。30分ほど早くついた私達はエレベーターで2階へ上がり店内をウロウロして時間調整。約束の時間になってから店の前にある日陰のベンチに座って待っていると前から歩いてくる男性がAさんに声をかけてきてご対面。暫く話してからようやく私のことを紹介してくれました。それからというもの、出てくるは出てくるは、Aさんの過去の暴露話。天然ボケの失敗談から就職の秘話まで私の知らないことばかり・・・。

勝田先生は現在小学校の特殊学級を受け持っているそうで、車椅子の扱いもプロ級ではなくてプロとお伺いして私はさっそくエスカレーターの上り下りについて実演を頼んでみました。「じゃ、店内のエスカレーターで実技指導をやりましょうか」ということになり、Aさんは実験台に。

まずエスカレーターの昇りは前回の無計画旅行で私も経験していましたから問題なくクリアー。2階に上り終えてすぐに下り側で勝田さんがAさんの車椅子の前輪を持ち上げたまま前向きで乗り込みます。そのままエスカレーターは下り1階へ。もう一度2階へ上がり、今度は車椅子を後ろ向きに載せて1階へ。どちらもプロがやると簡単そうに見えます。Aさんに後ろ向きと前向きのどちらが怖くなかったかと尋ねてみると、前向きの方が怖くなかったそうで、介助者も前が見える分楽だし安全と勝田さんも仰います。

しかし、素人の私としては万が一車椅子を支えきれなくなった時のことを考えると、介助者が下に来る後ろ向きの方が安心です。そこで1度目は後ろ向き、2度目に前向きを体験させてもらいました。後ろ向きはさほど怖くもなく、時々後ろを確認しながら下りていき、なんなく1階に到着。ところが2度目の前向きの時にはエスカレーターに乗り込むときに自分が置いてかれそうでチョット冷や汗をかきました。

下りエスカレーターの手前で車椅子のステッピングバーを踏んで車椅子の前輪を持ち上げます。そのまま車椅子の後輪ををエスカレーターに載せます。そうすると当然、車椅子はどんどん前進をはじめるわけですが、私はまだエスカレーターに乗っていません。慌てて飛び乗ると今度は平らだったステップが階段状になり始めます。車椅子の後輪がステップの位置に来るように調節しながら、自分の足元も注意が必要です。これらのことが、1秒足らずの間にいっぺんに起こるわけですから、車椅子を支えている私はチョットしたパニック状態です。先に乗り込んだ勝田さんが下からそっと車椅子を支えてくれていましたし、何事も有りませんでした。

最後に勝田さんが階段を1人で車椅子を登らせて見せてくれると言い出しました。もちろんAさんが乗ったままです。これが出来れば駅などでも1人で介助ができるようになり、免許皆伝だというのです。

上り階段で、車椅子を後ろ向きにして介助者が階段の上に立ちます。その状態で車椅子を1段ずつ引き上げます。実際やらせてもらいましたが、思っていたより簡単でした。足を踏ん張って腕と腰の力で階段を1段引き上げる。それの繰り返しです。

ただしこれも昇りの時の場合で下りは少々勝手が違うようです。特にAさんの車椅子は介助を前提に作られていないので取っての位置が10センチほど低く作られています。その為に普通に押す時でも介助者は前かがみの姿勢になりますので、Aさんの車椅子で階段を降りるのは止めた方が良いという判断になりました。

 
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